
松下 竜之介さん
Ryunosuke Matsushita
ゲストハウス店主・移住コーディネーター・ガイド
歩く、演じる、宮古を感じる。 趣味を仕事にする移住者の心躍るガイド
PROFILE
1976年生まれ。神奈川県出身。1999年、首都圏を中心に、コンタクトセンター運営会社やホテル等で、接客・サービス業に主に従事。2019年、宮古市地域おこし協力隊として宮古市へ移住。2021年に地域おこし協力隊を卒業し、2023年ゲストハウス3710店主となる。宮古市移住コーディネーター、ガイドとしての顔も持つ。宮古市民劇では役者兼スタッフとして活躍中。
中途半端にやってないから
仕事と趣味が両立できる
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最初に、仕事の内容を教えてください。
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宮古市の移住コーディネーターとして、移住希望者に宮古のことを教えたり、お仕事で宮古市に住むことになった人たちの暮らしのサポートをしたりしています。また、ゲストハウスの運営やガイドもしています。ゲストハウスには宮古市に観光で来られている1人旅の方、車を使わない人が割と多いですね。たぶん、今来られている方の3、4割はヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどの海外の方です。なので、丸一日、日本語を話さない日もあります。
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松下さんご自身が移住者でいらっしゃいますが、宮古に移住を決めたきっかけはなんですか。
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もともと地方移住をしたかったんです。最初から宮古市に行くと決まっていたわけではなく、5年くらい地方移住先を探したり、実際に行ってみたりしました。いくつかある候補の中で、実際に宮古の方のお話を聞いて、生活できるイメージが立ったというのが宮古を選んだ理由でしょうか。人生を1回リセットし、宮古の地域おこし協力隊として、新しいチャレンジをしようと思いました。

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仕事のやりがい、印象に残っていることはなんですか。
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自分がガイドをしたツアーでも、ゲストハウスでも「楽しかった」、「良かった」、「また来るね」などと言ってもらえることがやはり一番嬉しいですね。印象に残っていることはたくさんありますよ。SNSで個人的に僕を見つけて、欧米から訪ねてきてくれる方がいたり、お客さんがちょっとしたチップをくれたりとかですね、あとコーヒーをくれたり。そういうことは、けっこう印象に残りますかね。

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海外の方と関わる上で大変なこと、気をつけていることはなんですか。
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大変なことというか、気を付けていることは、やっぱり言葉と文化ですね。英語は今もコツコツ勉強していますが、多少通じなくても、ボディーランゲージと一緒だと伝わります。しかし、文化の違いは気を付けないといけません。数字の間違いもないようにしています。細かいことはなんとなく伝わればいいけれど、金額は絶対に間違えて伝えてはいけないので。例えばnineteenなのかninetyなのか、みたいなね。
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ゲストハウスやみちのく潮風トレイルの魅力を教えてください。
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実は僕は、割と人見知りなのですが、コミュニケーションを取る機会があって、それによって楽しい時間が作れることはすごく好きで。そこが魅力だと思いますね。みちのく潮風トレイルに関しては、海沿いを中心としたルートが世界的に少なくて、珍しいんですよ。また、山や海と人が住んでいる所が近く、混ざり合った環境があることが魅力です。

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次に趣味や余暇の過ごし方について教えてください。仕事以外の時間はどのように過ごしていますか。
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今はある意味、趣味と仕事が一緒になっていますね。自然の中や宮古の町を歩くことは仕事でもあるのですが、やっぱり趣味でもあるし。プライベートで町を歩いていて、自分が面白いと思ったことを人に教えたくなることもりますしね。あとは、市民劇にも参加しています。クリエイティブなこと、表現することも趣味だと思います。
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市民劇を始めたきっかけはなんですか。
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宮古に移住してきた当初、観光のお仕事をさせていただくことになっていて、観光協会の方に「市民劇っていうのがあるんだけど、やってみない?」と誘われたことがきっかけです。断りにくかったというのもありますが、移住したてで知り合いが1人もいなかったので、とりあえず参加してみたら、沼にはまりました。もともと、クリエイティブなことをやっていた時期があり、そういうのが繋がったところもあるのでしょうね。
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市民劇の魅力や楽しさはなんですか。
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クリエイティブなこと、妄想の表現、本当にはできないことが実はできるということを表現することは、楽しいと思います。いろいろなクリエイティブの要素って、だいたいすべて演劇に入っているんですよ。演技もそうですが、音、照明、色使いとか。演劇の中でいろいろな要素に関われるので、今、演劇が1番楽しいのかな。あとは、人前で話すことがすごく多い仕事なので、お互いに活かせる部分があります。声の出し方やお客さんの引きつけ方など、演劇の技術を使っています。

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お仕事と市民劇は繋がっているところがあるのですね。では、反対に大変なこと、苦労していることはありますか。
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市民劇は、生活を削ってやっているので大変ですね。チームプレイですから、多くの人が集まってひとつのものを作ろうとすると、いろんなことが起こるんですよ。考え方の違いをどう受け入れていくか、ひとつのものに一緒に向かっていくためには、どこでどうやって考えを合わせるか、そういうことが実は一番大変なのではないかと思います。でも、終わった瞬間の気持ちは何ものにも代え難いですね。
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趣味と仕事を両立する上で意識していることはなんですか。
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今、仕事と趣味を両立できているのは、中途半端にやっていないからだと思っています。ただ歩くことが好きというだけでガイドをやっているわけではありません。ガイドに活かすのであれば、ほかの人ができていないことをやっておくとか、ちょっと突き詰めて、とがったことをやったりします。趣味を仕事にすると、いろいろうまくいかないことがあります。趣味を商売に活かすのであれば、周りよりも明らかに頭が少しおかしいことをやらないといけないなって。周りの人がやっているぐらいのことをやっていたら、仕事にはなりません。
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もし丸一日自由に過ごせるという「理想の休日」があったら、どう過ごしますか。
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僕は、「もったいない性分」なので、寝て過ごすのはもったいないと思ってしまいます。なので、やっぱり歩きますかね。実際トレイルを歩いていると、1日ずっと歩いていたいと思う時が多くて、足と体さえもつのだったら、休まずに長い時間歩き続けてみたいです。
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宮古での暮らしの満足ポイント・不満ポイントを教えてください。
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宮古での暮らしに、これといって不自由はないですね。自然が近いことも満足ポイントです。都会のほうにいると、車で1時間くらい走ってもまだ都会で、1日がかりでないと海は見えませんし、すぐ渋滞してしまいますからね。

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松下さんにとって、ふるさととは?
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僕はふるさとが無い人なんですよ。出身地は神奈川ですけど、出生地は八戸なんです。だから、小さい頃の夏休みの思い出はすべて八戸。なので、もともと三陸地域には、ふるさと感があったのかもしれません。ふるさとは帰りたい場所というより、最終的に行き着いたところがふるさとになれば良いのではないかと思います。
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松下さんの希望は?
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世代的にもう折り返し地点なので、残りの時間でできること、自分が果たせる役割というのが最近やっと見えてきたので、そこに力を尽くすだけかなという感じです。そして、若い世代に対しては、宮古のおもしろさや魅力をまだまだ伝えきれていないと思います。それを伝えていきたいし、実際にガイドの仕事をしているところを見せたいですね。ガイドというのはボランティアではなく、ちゃんと稼げるということを見せていきたいです。
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Iターン(移住)を考えているひとたちにメッセージを。
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宮古には欠点もあるけど、合う人には合うよって伝えたいです(笑)。宮古に限った話ではないのですが、住む場所や仕事は自分で決めることであって、置かれた環境の中でベストを尽くすことが大切だと思います。何をやったら自分にとって良いのか、楽しいのかということを考え、見つけることが必要ですね。
2024年12月取材