岩船良子さん
Ryoko Iwafune
鮮魚店経営
魚食文化をこよなく愛する元プロレスラーの看板女将
PROFILE
1980年生まれ。宮古市出身。大学進学後、単身、アメリカ領土プエルトリコに武者修行し、現地でプロレスラーとしてデビュー。帰国後もプロレスラーとして活躍した後、出産を機に引退。英会話スクールの講師として働く最中、2011年の東日本大震災の発災時に宮古市に帰省していたことから、Uターンを決意。家業の岩船商店で働く。
この街の誇りである魚介類をお客様へ
-
お仕事内容について教えてください。
-
魚菜市場の岩船商店で働いています。魚市場で買い付けた魚を、地元のお客様に売ることが主な仕事です。また、全国のお客様に地方発送する対応もしています。
-
お仕事をしていて、やりがいを感じる時はありますか?
-
ただ魚を売っているように見えるかもしれないけど、地元の心がたくさん詰まっているんですよ。魚は宮古の特産物であり、誇りだと思っています。宮古を離れて暮らしている、全国のお客さんから注文を受ける日々ですが、やっぱり自分が生まれ育った場所のものが食べたいんですよね。そんなお客さんに宮古の魚介類を届けることが、私の存在意義だと感じます。
-
この仕事を通して印象に残っている事はありますか?
-
毎日、魚市場に買い付けに行く社長や社員が、良い魚を買ってくるんですよ。見たことがないような貴重な魚を買い付けてくることもあって、そういう魚を販売できるのがおもしろいですね。あとは、普段お電話で注文してくれる市外のお客様が、お盆やゴールデンウイークにわざわざ会いに来てくれることがあって、それがとても嬉しいです。
-
反対に大変だった事や辞めたいと思った事はありますか?
-
東日本大震災の後が一番大変でしたね。魚菜市場の建物自体は助かったけど、毎日魚を買い付けてくる魚市場は、津波に流されてしまいました。ホタテやワカメなど、普段あるものがなくなって、売れるものが何もなくてとても大変でした。ただ、漁師さんたちが一ヶ月も経たないうちに船を出して、漁を再開してくれました。それが救いでしたね。本当に助かりました。
-
岩船さんの高校卒業以降の経歴について教えてください。
-
英語が得意だったので、外国語大学に行きました。一方で、小さいときから憧れていた、プロレスラーになりたいという気持ちがずっと消えませんでした。バイトをしてプロレス観戦を続けていた時に、「プロレスラーになるには今しかないな」と思って、大学を辞めることにしました。そして、単身、プエルトリコに渡り、プロレス道場で練習を積み、地元のプロレス団体で試合に出ていました。帰国後も含め、計6年ぐらいプロレスをやっていましたね。そのうちに、長女が産まれ、プロレスを引退して、英会話スクールの先生を始めました。震災の時は、たまたま宮古にいて、そのまま帰れなくなってしまったので、そこから家業の岩船商店で働きはじめました。
-
素晴らしい経歴ですね!では、今現在の仕事以外の活動について教えてください。
-
水産庁の「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」のメンバーに入っています。全国の漁師さんや料理教室の先生など、水産に関わるいろんな女性たちが集まって魚食を盛り上げようというプロジェクトです。
-
今後の展望や夢を教えてください。
-
魚屋という職業を、女の子が憧れるような仕事にしていきたいです。現状はイメージがいまいち良くないかもしれないですが、私は、自分がこれまでやってきたプロレスや英会話教室などの仕事と比べても、魚屋が一番おもしろいなと思っているんですよ。あとは、魚食の普及にも力を入れていて、その一環として、お料理教室も開いています。魚食文化の衰退を防ぎたいというのが、今一番の目標で、日々発信している理由です。
-
仕事以外の時間で余暇の過ごし方について教えてください。
-
大体、料理をしていますね。あと、息子と一緒に昆虫採集にハマっているんです。夏は蝶をとったり、冬は幼虫やサナギを探しに行ったり。あとは歴史も好きですね。お城巡りにも行きたいと思っています。
-
料理に関して、宮古だからこその利点や良さはありますか?
-
鮮度の良い魚介類が常に手に入ること。これが一番ですね。ここでしか手に入らない魚介類もいっぱいあります。
-
宮古での暮らしの満足ポイント・不満ポイントを教えてください。
-
満足ポイントは、自然があることですね。海があって山があるって最高だと思います。若いときは何にもないなって思ったけど、そうじゃないんですよね。ここには何でもあるんです。不満ポイントは、病院が少ないことです。
-
岩船さんにとってのふるさととは?
-
この海ですね。特別なんですよ、ここの海って。「私たちの特別な海」だと思っています。
-
岩船さんにとっての希望はありますか?
-
みんなと宮古で幸せに暮らしたいですね。若い人たちに、いっぱいこの街の良さを気づいてほしいなと思います。成長していく過程で辛いことや悲しいこともいっぱいあると思うけど、宮古に帰れば、自分の居場所があるんだって感じられるような、常に安心感があるふるさとであってほしいです。
-
Uターンを考えている人達にメッセージをお願いします。
-
帰っておいで。毎日美味しいものを食べて、元気に暮らせるよって伝えたいです。
2024年3月取材